タジキスタンの社会経済概要

タジキスタンの社会経済概要です、主に外務省基礎情報等を参考にしています。

概要

人口710万人(2010年国連人口基金)、14.3万平方キロ(日本の約40%)、ペルシャ語系のタジク語を話すタジク人が約80%を占める旧ソ連構成国家であり、1991年9月9日に他の中央アジア諸国同様独立したが、1992年、タジキスタン共産党系の政府とイスラム系野党反政府勢力との間で内戦がおこった。

1991年12月21日、独立国家共同体(CIS)に参加する。ロシアとは同盟関係にあり、国内にロシア軍が駐留している。1994年の暫定停戦合意およびエモマリ・ラフモノフ(現在はラフモンと改名)大統領の就任後、国際連合タジキスタン監視団(UNMOT)のもとで和平形成が進められてきた。

1997年に内戦は終結、UNMOTは2000年に和平プロセスを完了させ、以後は国際連合タジキスタン和平構築事務所(UNTOP)が復興を支援した。2001年の対テロ戦争以来、フランス空軍も小規模ながら駐留している。

地理的には内陸国で北にウズベキスタン、キルギス、東に中国、南にアフガニスタン、西にウズベキスタンと国境を接する。7000mを超える高山、深い谷と急流、比較的雨量の多い内陸性気候である。

タジキスタン略史

紀元前4世紀 アレクサンドロス大王により制圧
紀元前250頃 グレコ・バクトリア王国成立
1〜3世紀 クシャーン朝による支配
6世紀中頃〜 テュルク系遊牧民(突厥)の侵入、次第に住民のテュルク化が始まる
7世紀 ソグド人の活動が最盛期に
8世紀以降 アラブ勢力の侵入、土着のイラン系住民がイスラーム教を受容。テュルク系諸民族がこれらイラン系住民をタジクと呼ぶようになる
9世紀後半〜10世紀 イラン系のサーマーン朝成立(文芸・学問の発展)
13世紀 モンゴル帝国の支配
14世紀後半〜15世紀 ティムール帝国の支配
16世紀 シャイバーン朝の支配
18〜19世紀 ブハラ・ハン国、コーカンド・ハン国の支配
1860年代 現在のタジキスタン北部がロシア帝国に併合
1890年代 パミール地方の大部分がロシア帝国に併合
1924年 中央アジアの民族・共和国境界画定により、ウズベク・ソヴィエト社会主義共和国内にタジク自治ソヴィエト社会主義共和国が成立
1929年 ウズベク共和国から分離し、タジク・ソヴィエト社会主義共和国に昇格
1990年2月 ドゥシャンベ事件(アルメニア難民移住への抗議行動を契機とする騒乱事件)
1990年8月23日 共和国主権宣言
1991年8月31日 国名を「タジキスタン共和国」に変更
1991年9月9日 共和国独立宣言
1992年5月 タジキスタン内戦状態に
1992年11月19日 ラフモノフ最高会議議長就任
1994年11月6日 ラフモノフ大統領選出
1997年6月27日 タジキスタン内戦の最終和平合意成立
1999年11月6日 ラフモノフ大統領再選
2006年11月6日 ラフモノフ大統領再選

政治・外交

タジキスタンは共和制をとる立憲国家であり、現行憲法は1994年11月に採択されたもの、国家元首として強大な権限を憲法により保障されている大統領は、国民の直接選挙で選出され、任期は7年、首相任命権がある。

主要政党にはタジキスタン人民民主党、旧ソ連時代の政権党であったタジキスタン共産党、そしてイスラム主義の宗教政党タジキスタン・イスラム復興党の3つがあり、与党はエモマリ・ラフモン大統領(2006年11月選出、任期7年、(2007年4月に「ラフモノフ」から「ラフモン」に改姓)率いるタジキスタン人民民主党である。

議会

二院制

上院:「国民議会」(任期5年、定数33、前回上院選挙は2010年3月25日)

下院:「代表者会議」(任期5年、定数63、前回下院選挙は2010年2月28日)

政府

(1)首相 アキル・アキロフ

(2)外相 ハムラーハン・ザリフィ

内政

(1)独立直後の1992年、政権側の旧共産党勢力とイスラム勢力を含む反政府勢力との対立から内戦が発生。この混乱の中でラフモノフ最高会議議長(改名により現在はラフモン大統領)はCIS合同平和維持軍の派遣要請等、国内和平達成を目指して積極的な外交を展開。しかし、1994年の暫定停戦合意の後も内戦はしばらく継続し、多くの犠牲者が出た。同年11月には大統領制が復活、それに伴う大統領選ではラフモノフ最高会議議長が当選(得票率60%)。その後も断続的な戦闘状態が続いたが、1997年6月に最終和平合意が達成され、国内情勢は安定化に向かった。

(2)1999年9月に憲法改正の国民投票、同年11月に大統領選挙、2000年に議会選挙が行われ、和平プロセスは完了した。UNMOTはその任務を終了し、同国復興支援のため新たに国連タジキスタン和平構築事務所(UNTOP)が設立された(UNTOPは2007年任務終了)。

(3)2006年11月に実施された大統領選挙では、ラフモノフ大統領が約80%の得票率を得て圧勝し、再選された。

(4)隣接するアフガニスタンの情勢がタジキスタンに与える影響は大きく、タリバン政権崩壊後治安上の脅威は低減したが、テロ、武器・麻薬流入問題が深刻である。

(5)2010年2月28日、下院議会選挙を実施し、ラフモン大統領が党首を務める与党人民民主党が圧勝。

外交基本方針

(1)全方位的外交を模索。しかしロシアからの投資、ロシア軍の国内駐留等、経済・軍事面でロシアへの依存度は大きい。

(2)米国とは、9.11事件以降、「テロとの闘い」への支持から、米軍等の空域使用、軍事施設使用を許可している。

(3)中国からは、多額の借款供与、インフラ整備支援を受けており、関係を深めている。

(4)アフガニスタンと国境を接するタジキスタンは同国の安定化に強い関心を有しており、カルザイ暫定政権成立後のアフガン復興への国際社会の協力を呼びかけている。

(5)ウズベキスタンとは双方とも自国内に相手国民族を抱え、また双方が相手国の反政府勢力を匿っているとの主張を行う複雑な関係である。ウズベキスタンはタジキスタンからの航空路再開や査証免除協定に関する提案に消極的。 更に、国境付近の地雷除去問題、水・エネルギー問題を抱えている。

地方行政

首都はドゥシャンベであり首都を含む政府直轄地域となる。地方は、南部のハトロン州(州都Kurugan-Tube)、北部フェルガナ盆地方面のソグド州(州都Khojand)の2州と、東部パミール高原のゴルノ・バダフシャン自治州(州都Khorog)から構成される。

経済

経済概況

(1)旧ソ連諸国の中では最貧国。独立後の紛争で生活水準全般が低下。内戦の克服により経済の成長に転じたが、依然として失業率も高く経済状態は厳しい。IMF、世銀と協力しつつ経済発展及び開発をすすめているが、当面外国からの支援が必要である。2008年10月の世界金融危機以降は、経済的に関係の深いロシア、カザフスタンの景気後退の影響を受け、海外出稼ぎ労働者からの送金も減少。GDPの成長は鈍化している。

(2)綿花栽培を中心とする農業、牧畜が主要産業。工業部門では繊維産業が比較的発達している。小規模ではあるが、亜鉛、錫のほかウラン、ラジウム、ビスマスなどの希少金属の鉱床を有している。また、水資源が豊富。

(3)1995年5月10日独自通貨「タジク・ルーブル」を導入したが、2000年10月に「ソモニ」に変更。

主要産業

農業(綿花)、アルミニウム生産、水力発電が主要産業である。

安価で大量の電力生産は精錬に膨大な電力を必要とするアルミニウム精錬を行うためであり、生産量は世界シェアの1.2%に相当する31万トンに達するが、原料となるボーキサイトはウクライナなどからの輸入している。輸出金額に占めるアルミニウムの割合は53.7%を占め、タジキスタンの重要な産業である。

経済指標

GDP:56.4億ドル(2010年:IMF)

一人当たりGDP:733.86ドル(2010年)

経済(実質GDP)成長率:6.5%(2010年:IMF)

物価上昇率:6.5%(2010年:IMF)

失業率:2.3%(2009年:CIA)

貿易額:(1)輸出 11.5億ドル、(2)輸入 28.56億ドル(2009年:WTO)

主要貿易品目:

(1)輸出 非貴金属(主にアルミニウム)、繊維・繊維製品(主に綿花・綿花製品)、輸送機関・車両・設備、鉱物、植物製品

(2)輸入 鉱物(主にボーキサイト)、輸送機関・車両・設備、化学製品、植物製品、非貴金属、食料加工品

(タジキスタン共和国統計年鑑)

主要貿易相手国

(1)輸出 中国、トルコ、ロシア、ウズベキスタン、イラン、チェコ、オランダ

(2)輪入 ロシア、カザフスタン、中国、ウズベキスタン、ウクライナ、アラブ首長国連邦、トルクメニスタン、トルコ

(タジキスタン共和国統計年鑑)

通貨:ソモニ(Somoni:2000年10月30日導入)(CIS統計委員会)

為替レート:1ドル=4.70ソモニ(2011年10月現在:タジキスタン国立銀行)

エネルギー

エネルギー供給はヌレークダム(世界一標高が高い)や近年完成間近であるサングトゥーダ・ダムなどの水力発電に依存し、年間発電量144億kW時(2001年)のうち、97.7%を水力発電でまかなっている。水不足となる冬季には熱併給所の小規模な火力発電に依存している。年間発電量144億kW時(2001年)のうち、97.7%を水力発電でまかなっている。

不足電力は、ゼラフシャン川などに大規模ダムなどを作らず、夏季に安定した水供給を約束する見返りとして、ウズベキスタンやトルクメニスタンから冬季には電気を輸入している

鉱物資源

特筆すべきなのはアンチモン鉱である。2002年時点で3000トンを採鉱しこれは世界第4位であり、世界シェア2.1%に相当する。このほか、金、銀、水銀(20トン、世界シェア1.1%)、鉛を産する。有機鉱物資源は亜炭、原油、天然ガスとも産出するが量は多くない。ウラン鉱も存在する。

民族・言語・宗教

民族

タジク系(79.9%)、ウズベク系(17.0%)、キルギス系(1.3%)、ロシア系(1.0%)、その他(0.8%)の人種構成である。

言語

公用語はタジク語(イランのペルシア語やアフガニスタンのダリー語などとともにイラン語派の西方方言群に属する。現在タジク共和国で使用されているタジク語北西方言は、ウズベク語などテュルク諸語との接触により文法や語彙の面で大きな影響を受けている)。ロシア語も広く使われている。

宗教

タジク人の中ではイスラム教スンニ派が最も優勢。パミール地方にはシーア派の一派であるイスマーイール派の信者も多い。

タジキスタン・リンク

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